Seminar B/研究会B
Theoretical Linguistics in Practice/理論言語学実践
Spring 2025
Fri 5th
16:30 ~ 18:00
動詞 Verbs
■このセメスターの内容:2025年度の後期では、言語理論を考える上で中心的な役割を果たしてきた「動詞」を対象に活動を行う。
例えば、次の二つの例文を見られたい。
(1) The boy broke the vase.
(2) The vase broke.
他動詞のbrokeでは、the vaseは、目的語の位置に来ていたが、自動詞のbrokeとともに使われると、the vaseは主語の位置に登場する。
ところが、いつもいつでもこのような対応関係が見られるのかというとそういうわけではない。例えば、次の例を見てほしい。(*とはその文が非文であることを表す)
(3) The boy broke the school regulation.
(4) *The school regulation broke.
それにも、動詞を変えるとどんな目的語であれ、そもそも(1)/(2)のようなペアを作ることができなかったりする。
(1') The boy found the vase.
(2') *The vase found.
なぜ、このような差が存在してしまうのであろうか。英語が変なのであろうか。
いや、どうもそうではなさそうなのだ。日本語も同じような現象を見せる。次の例を見てほしい。
(5) 男の子が 障子を 破った。
(6) 障子が 破れた。
先ほどの(1)/(2)と同じように、自動詞になると目的語が主語の位置に登場している(「が格」を伴っている)。日本語と英語なんて全然違う言語のはずなのに、なぜかこんなところでよく似ている。ふむ。妙ではないか。
そして、極めつけは次の(7)と(8)だ。「障子」を「校則」にすると、びっくりしたことに、他動詞だけが許されて、(8)は非文になる。これは、(3)と(4)と同じである。日本語と英語なんて、全然違う言語のはずなのに、なんで、こんな妙なところで共通性を見せるのだろうか。
(7) 男の子が 校則を 破った。
(8) *校則が 破れた。
言語学者は、こういうデータをこう考える。これらが、たまたま偶然って言うのはさすがに無理がある。英語だとか日本語だとか、そういった個別言語の背後に共通して存在する、人間言語であるがゆえの特徴というものがあると考えた方が、すっきりする。
なら、英語と日本語を比較していくことで、人間言語の一般的な性質を解明することができる。それって、とても気にならない?
というわけで、この研究会では、「動詞」というものを軸に、日本語と英語を比較しながら人間言語に見られる特徴を探っていく。こういう話にそそられた人は、ぜひ履修を検討してください。
■メンバー紹介:こちら
■スケジュール:本年度は、この研究会が初めて組織される年になるので、学生の力や要望を踏まえ、多少大幅にスケジュールが変更される可能性があることを承知されたい。
TBA
Class 1: 「序章 動詞研究の現在」
10月3日(金)5限
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活動1:コースガイダンス
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活動2:自己紹介(各学生の興味の紹介)
Class 2: 「第一章 自動詞と他動詞の交替」
10月10日(金)5限
Class 3: 「第二章 移動と経路の表現」
10月17日(金)5限
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担当:⿅⽥さくら
Class 4: 「第三章 心理動詞と心理形容詞」
10月24日(金)5限
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担当:姜奎里
Class 5: 「第四章 壁塗り構文のメカニズムを探る」
10月31日(金)5限
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担当:佐野夏輝
※11月7日は休講(学会のため)
Class 6: 「第五章 二重目的語構文」
11月14日(金)5限
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担当:上⽥祐輔
※11月21日は三田祭で授業はありません
Class 7: 「第六章 結果構文」
11月28日(金)5限
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担当:キムジュンス
Class 8 :「第七章 中間構文」
12月5日(金)5限
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担当:牛島櫻
Class 9/Class 10 中間発表会
12月12日(金)5限(※180分予定)
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成果発表会:一人20分(15分発表+5分質疑応答)×9人
※12月19日は休講(海外出張)
Class 11: 「第八章 難易構文」
12月26日(金)5限(年内最後の授業)
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担当:小松真優
Class 12: 「第九章 名詞+動詞の複合語」
1月9日(金)5限
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担当:Somaiya Akter Riya
※1月16日は月曜授業
Class 13: 「第十章 複雑述語の形成」
1月23日(金)5限
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担当:平林君也
Class 14/15: 期末発表会
1月30日(金)5限(予定が変更されることがあります)