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レポートや卒業プロジェクトのテーマを探している人へ
 

レポートや卒業プロジェクトのテーマを探すのは、大変ですよね。適当に好きなものを直感で選ぶというわけにもいかないですし。そう悩んでいる人たちのために、進め方と着眼点に関してアドバイスを送ります。

「進め方についてのアドバイス」

一番オーソドックスな方法は、授業や研究会で読んだ論文を出発点にするというものです。​

これは、何かというと、トピックや研究テーマを探すとき、つまり、研究を始める段階では、誰かが書いたものを出発点にした方がいいよということで、逆に、自分自身の中から引っ張り出そうとするな、ということです。

これは、
「研究にはオリジナリティが大事だ」というマインドになりすぎている人や、「あんまり他の人には自慢になるから言わないけれど、私は結構勉強したから私なら友達じゃできない研究ができるはずだ」みたいに思っている人が陥るパターンです。

100%失敗するよよとは、もちろん、言えませんが、少なくとも、私はそういうマインドでは研究はしていないですし、そういうやり方では、たぶんうまくいかないかなと思っています。

逆に、オリジナリティは最後にいつの間にか立ち上がっているものです。つまり、研究の最初に設定するものではなく、最後に見つかっているものだと思った方が肩に力を入れずに研究に取り組めるだろう、と思います。幸せの青い鳥と同じで、探そうと思っていると見つからなくて、見つけるのをやめると、いつの間にか見つかっているみたいな。

もちろん、成果物を出すときには、もう見つかっているので、「オリジナリティのある研究です」のように、オフィシャルな場面では、オリジナリティを強調します。だから、論文や学会発表では、オリジナリティは大事だ、という印象を受けやすいとは思います。ですが、はじまりから金塊を見つけるぞと思って始めるのは、ちょっと素人さんっぽいかなっていう気がします。

「着眼点に関するアドバイス」

  1. 名詞を疑問文にしよう!
    研究を始める時には、「日本語の受動態と英語の受動態」みたいなトピックを思いついたとしましょう。これで、レポートや卒論が書けるでしょうか?

    研究者の目から見ると、これだけは「分からない」です。このままでは、問いが焦点化されていないからです。このトピックに関わるものは無数にあるからです。例えば、次のものはすべてこのトピックを共有していると言えます

    日本語の受動態は、主語の選択制限において、英語の受動態と違うのか?
    韓国語の母語話者にとって、日本語の受動態のほうが、英語の受動態よりも学びやすいのか?
    日本語の受動態の歴史的発達は、英語の受動態の歴史的発達と、文法化の観点から同じだと言えるのか?
    会話において、受動態が選択される場面は、日本語と英語で違うのか?

    ですが、当然、それぞれ調べるべきデータが変わってきます。その中のあるものは、研究しやすいものかもしれません。ですが、別のものは研究しづらいものかもしれません。あるものは、研究意義があるかもしれません。別のものは、研究価値がないかもしれません。

    なので、レポートや卒プロの際には、「『日本語の受動態と英語の受動態』をやりたいです」のような名詞を先生に伝えるのではなく、「日本語の受動態は、主語の選択制限において、英語の受動態と違うのか?」というような疑問文に落とし込んでから相談をしてみてください。

     

  2. 実行可能か?
    名詞を疑問文に変えて、例えば、「宇宙が生まれる前には何があったのか」という問いを立てたとしましょう。解き明かしたら、ものすごいインパクトがありそうです。ですが、たぶん、これは、学部生の方が取り組むのには、でかすぎる問いです。

    「でかすぎる」というのはどういうことかを理解する簡単な方法は、「何週間でデータを取れそうか」を考えることです。そもそもどうやってデータを取りましょうか。望遠鏡は必須です。買えますか?撮ったデータを統計解析でもするのでしょうか。その技術はありますか?…等々考えてくると、これは、少なくとも数年(あるいは数十年)以上かかるものかも…やめよう…と正しく撤退できるかと思います。

    ​こういう撤退ができるのは大事です。「こだわることに、こだわりすぎない」というのが、この仕事をする上で、とても大事なことです。

    言語学でよく陥りがちなパターンには、たぶんいくつかの類型があります。

    第一は、「一般的に人間の言語では…なのか?」のように、世界の言語を全て調べなければならなさそうな、大きな問いを立ててしまうことです。

    第二に、ネイティブスピーカーやコーパスが見つからないパターンです。○○語を研究したいと思っているので、「〇〇語では…なのか?」というリサーチクエスチョンを立てたまではいいのですが、〇〇
    語の話者にアクセスしにくくて…みたいなパターンですね。

    第三に、「歴史的に○○は○○から変化したのか」みたいに、共時的なデータを超えて、通時的なデータを相手にしようとすると、たいてい難易度は上がります。適切な歴史データがあるかどうかは、きちんと調べておきましょう。

     

  3. 研究意義があるか?
    ですが、解くことが実現可能な疑問文(リサーチクエスチョン)が作れたら、それでおしまいとはなりません。考え付くリサーチクエスチョンの全てが等しく取り組む価値のあるものだとは限らない、からです。

    例えば、「韓国語の母語話者にとって、日本語の受動態のほうが、英語の受動態よりも学びやすいのか?」というリサーチクエスチョンを立てたのだけれども、先行研究ですでにそれをしている人がいたとします。そしたら、「新しく」みなさんがレポートや卒プロを書いたとしても、その成果物の情報はゼロ・ビットです。逆に同じリサーチクエスチョンでもまだ誰もしてないのであれば、それが成就できた際、そこに大きな情報価値が生まれます。

    ということは、あるリサーチクエスチョンに研究意義があるかどうかは、その成果物自体の内在的な価値として絶対的に決まっているというよりも、研究分野というネットワークのなかで初めて見いだされる相対的なものなのだ、ということです。

    そのためには、しっかり先行研究を知っている必要があります。まず、Google Scholarなどを用いて、先行文献のリストを作りましょう。指導教官などに相談するときには、自分が作ったリストを持って行って、見せるとよいでしょう。

    最初に、研究を始める時には、授業や研究会で読んだ論文からスタートするといいよ、と言ったのは、こういう理由でもあります。

     

  4. ちゃんとした先行研究を読む!
    先行研究と呼ばれるものすべてに等しく読むべき価値があるかどうかというと、答えは否です。優先的に読むべきものとそうでないものがあります。レポートも卒プロもともに期限付きのプロジェクトですから、限られた時間を効率的に使うためにも、読む前に何を読むべきか知ることが大切です。

    まず、媒体のジャンルがあることを知っておいてください。

     

    • A. ハンドブック: アカデミックな世界では、これは、携帯可能な小さな図鑑を指すのではなく、その分野の第一線の専門家が書いたその分野のまとめのことを指します。出版年の一番新しいハンドブックに記載されたそのトピックの研究史は、第一流の専門家の人がまとめる研究史ですので、その分野の来歴を理解するのにとても有効です。よく使われるものを、このリンクに挙げておいてので、まず何から読むべきか悩んでいる方は、ここから始めましょう。
       

    • B. 紀要論文:学部生にとって、これが気を付けないといけないものかもしれません(タイトルに、「〇〇大学紀要論文集」みたいに書いてあるのがこれです)。大学の諸々の事情で出版される定期刊行物です。査読がある紀要もあるけれども、うちわでまだ熟していないアイデアのものも査読なしで出版できてしまうので、玉石混交です。なぜならば、もしもすごい研究を成し遂げたとしたら紀要には載せずに国際誌に載せるのが研究者だからで、そうではない媒体で発表されている、ということは、国際誌とかには載せられなかったものとか、あるいは、まだまだ初期段階のものなんかが割合的には多くなります。日本語で著されていることも多いし、無料で読めるものが多いので、ググってみると最初に出会ってしまうかもしれませんが、ざっと目を通して、参考文献を知るくらいに留めて、もっと質の高い媒体を探しましょう。
       

    • C. 学会予稿集(プロシーディングス):学会で発表されたもの/されるものをまとめたブックレットのこと。質の高い国際学会のプロシーディングスは、ちゃんとした論文のように高く評価されます。ですが、国内学会のプロシーディングスは、無視するわけにはいきませんが、応募者が少なくたまたま通って発表したものなのかもしれませんので、参考程度にとどめておくのがいいでしょう。
       

    • D. ジャーナル論文:基本的に、言語学の分野で読むべきものはこれです! それも、査読付きの国際誌のものを読むとよいでしょう。短いもので20ページ、長いものでは、70ページ(少し古いやつにある)、平均的に30から40ページくらいでしょうか。しっかり、がっつり読むのは、最初のうちには大変かもしれませんが、読んだら読んだ分だけ、自分の力になっているはず!ファイト!
       

    • E. :意外に、こちらも注意が必要だったりします。基本的に引用されて、議論の対象になりますが、査読されて掲載された国際誌論文とは違って、査読がなく出版できるものもありますので、なかなか論文にはならないけれど、いいこと発見したと思っている、という時に、出たりするので、特に日本語の単著のものには、なかなかとんがったものもあります。ただ、高名な研究者の書かれた単著は、その自由度がゆえに、論文では味わえない、斬新な視点が含まれていて、とても勉強になります。ただ、ビギナーの方の中には、(日本語の)本しか読んでないみたいな人もいて、そういう人は、ちょっと心配になります。

      F. 博士論文:ジャーナル論文とともに見つかったら、ちゃんとリストアップしておきましょう。相当の年数と労力が注ぎ込まれて、その分野のまとめや分析が提示されているので、全部読みおおすのは大変かもしれないけれど、「先行文献のまとめ」なんかのチャプターを読むと、その分野のあらましやその分野でどんな研究者が有名なのかがよく分かってベリーグッドです!ただ、日本の大学では博士論文を(なぜか)公開していないところが多いので、手に入りにくい難点があります。でも、自分の研究分野にぴったりの人を見つけたら、その研究者にコンタクトを取って博論を入手するのもありですよ。

       

  5. コミュニケーション大事!
    研究で一番怖いのは、独りになってしまうこと。独りだとモチベーションが下がったり、同じところぐるぐる回ったり、逆に、目移りして時間はかけているのに、散漫なシチュエーションになったり、いいことないです。

    自分は天才だとか、自分を礼賛し始めたら、ちょっと怖いかも。先生や、先輩や、同期や、後輩にいたるまで、いろんな人に聞いてもらいましょう。そして、積極的に批判されてください!

    えー…。やだな、最初は、むっとすると思うんですが、後々、あ、あの時批判してもらえてよかったな、おかげで大きな改善が達成された、という瞬間を経ながら、成長します(わたしも)。

    ​逆に、誰かから相談を持ち掛けられたら、積極的に相談に乗りましょう!同じ研究会にいると、「みんなライバル…!」と思うかもしれませんが、本当のライバルは、他の大学や世界にいます。同じ大学の同じ研究会に集まった人たちは、ともに仲間だと思って、心理的安全性高く、楽しく、仲良くいきましょう!








     

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